セカンドライフの始めかた

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magslmagsl 2007/01/10

[ガイド] 未来の思い出 episode 008

「この、人でなし!」半径20m以内にいる人が、全員振り返るほどの大声でロキは怒鳴った。
「ひどいことを言うなぁ」ラブはしょんぼりと項垂れる。
「だって、普通しますか? こんなこと、いい大人が!」
怒られて小さくなったラブに対して、ロキは大きく出る。
「だって……悪い大人だもん」いじいじと地面の草をむしりながらラブが小さな声で答える。
「そういう問題じゃない。恥ずかしくないんですか? こんなことして」ロキは怒りを通り越して呆れ始めたらしい。
「羞恥心なんてものは母親の胎内に忘れてきたよ」ラブが舌を出して可愛く答えるが、ロキはまったく可愛いとは思わなかった。
「まったく。人間失格ですよ」いい加減怒りつかれたロキはため息混じりに答える。
「人間失格か。人間であることが、それほど偉いのかな?」ラブが立ち上がる。
「え……。えらいとか、そういう問題じゃなくて」突然復活したラブにロキが戸惑う。
「人間じゃなくても誇りを持って生きている人たちを紹介しよう」そう言うと、ラブは、どこかに飛んでいき、ロキを呼んだ。
ロキがテレポートをし、辺りの光景が徐々に鮮明になっていった。
どうやら、樹木。それも、かなり大きい。巨大な木に、寄生するかのように床がくっついている。木全体が町を構成する、その中に、二足歩行の動物たち。背はそれほど高くなく、身体を覆う柄というべきか模様というべきか、毛並みが鮮やかで、どこか牧歌的な雰囲気すらある人々がいる。そんなファンタジックな光景だった。
「……ここは?」ロキが辺りを見回しながら言う。
ラスクウッド。二足歩行の動物たちの縁の地さ」ラブが答える。
どこにいても、不自然な容姿のラブではあるが、なんとなくここでは妙になじんでしまっているような気すらする。
「不思議な場所ですね。なんというか、自然っぽいというか」
「自然? バカ言うなよ。二足歩行する動物のどこが自然なんだ、この異常なまでに巨大な木も、不自然なことだらけじゃないか」ラブが大きく手を広げる。
「そうですけど……」ロキが口ごもる。
「木とか動物とかを見ると、やたらと自然とありがたがるのは、それこそ不自然だ。人間だって動物の一種、それが作った科学的なものだって、自然といえば自然だぜ? 人間が動物を見下してみるのはよくないな」そう続けるラブの背後に一際大きな影が近づいた。
「なんだ? どこかで見たサルだと思ったら、ラブちゃんじゃないか」薄い桃色の大きな顔をした人影は、そういうとラブの肩に手を置いた。
「おぉ! そういうお前は……えーと、ブタロウじゃないか!」
「違う! ゴノウだ」大きな身体をした二足歩行の豚のような男は、鼻をフゴッと鳴らしながら怒鳴った。
「あぁ、そうだったな。ウだけあってた。惜しいね」
全然惜しくないなぁ、とロキが思っていると、ゴノウと名乗る大きな豚男は、ロキのことを品定めするように見る。
「こちらは?」
問いかけられたラブは思い出したように言った。
「残念だけど、これは食べられないぜ」
「食べないよ! 友達か?」ゴノウは、足を大きく踏んで声を上げた。
「はじめまして。ロキです」ロキは、恐る恐る頭を小さく下げる。
「こいつはロキ、どうも頭が固くてね。こっちはゴノウ。まぁ、見ての通り、豚だ」ラブはお互いを紹介する。
「豚……ですか」ロキは、改めてゴノウの全身を見回す。大きく膨れたお腹を揺らしゆっくりと動く、その重みで貧弱そうに見えるこの木造の床が抜けないか心配になる。
ゴノウが鼻を鳴らしながら「そんな、豚を見るような目で見るな! 俺は紳士だし、人間を食べたりしない」と騒ぐ。
ラブは、ゆっくりとロキを見て言う。
「どうだ? 人にあらざるものは、卑しいものかな? まぁ、ある意味、こいつは卑しいけど、それはこいつの個性であって、人で無いものがすべてそうではない」
「あんたに言われたくないブー!」
「なんか、すみませんでした。人が偉い、なんて思ってはいなかったつもりなんだけど、やっぱり、どこか心の中で思い込んでいたかも知れません」ロキは決まりの悪そうな顔で少しだけ頭を下げた。
それを見て、ゴノウは豪快に鼻を鳴らしながら笑うと「なぁに、気にするなお兄ちゃん。俺らはこんななりだから、誤解を受けることもあるんだ。でもな、見た目がどうであろうと、その者に優劣なんかない」とロキの背中をたたく。
「区別は必要だ。でも、差別は必要ではない。俺たちは違う、というそのことをしっかりとわかっていれば問題はないさ」ラブがやさしく笑う。
自分は気がついた時には人間になっていた。そのせいで、人であることが当たり前に思え、傲慢になっていたのかもしれない。人と動物は、確かに違う。しかし、それは、人と人が、それぞれ違うことと似たようなものなのかもしれない。
「よし、そろそろ行くか。あんまり長居すると、食べられちゃうかもしれないからな」ラブは、腕を天にむけて伸ばす。
「食べないよ! 人間を食べるのなんてあんたくらいだよ!」ゴノウは憤慨した。
「え……。ラブさん、人間を食べるんですか?」ロキは、冗談だと思いつつも、この人の場合ナニを考えているかわからないと警戒しながら言った。
「いつもじゃない。たまにだよ」ラブは、なぜか照れながら言った。
冗談なのか、本気なのか、ひょっとして僕のことも食べる気で親切にしていたのだろうか。
色々なことが頭を駆け巡る。
「俺も行こうかなぁ、暇だし」ゴノウが聞こえるように独り言を言った。
「来る? お前が来てくれれば心強いよ。……お腹がすいたときとか」ラブは真顔で答える。
「非常食扱いかよ! この人でなし!」ゴノウが足を大きく踏み鳴らす。
「美味しく熟成したらまた来るよ。それまで上手に育っておいてくれ」ラブは背中越しに声をかける。
「まったく、人を食ったやつだ……」ゴノウがポツリとこぼす。


hiya.Loveの身になにがっ!?
Lokiです。何もありません。
今回は、セカンドライフの中でも人気のあるアバターの種類、ファーリーと、ラスクウッドの紹介です。
ファーリーって、なんか柔らかそうなイメージがありますね。
その通り。ファーリーとは、Furry。ふわふわの毛皮をまとった。というような意味だね。SLでは、主に人間以外の動物っぽいものを総称して呼んでるんだ。
ということは、ものすごく毛深い人間はファーリーじゃないの?
面倒くさいこと聞くなぁ。そんなのは、本人の気持ちの問題だよ。たとえ、ツルツルの毛の生えていない猫のスフィンクスのアバターでもファーリーと呼ぶんだ。

 


細かい定義じゃなくて、なんとなく動物系っていうのはファーリーなんですね。
そういうこと。別に動物は実在じゃなくてもいい。そもそも、二足歩行の毛がフワフワなやつなんていないだろ?
ムックとか……。
あれは雪男だしね。そういう仮想世界ならではのファンタジックな存在になれるのもセカンドライフの魅力だよ。
ファーリーの他にはどんなのがいるんですか?
あらゆるアバターがいるよ。ロボットもいるし、植物もいる。微生物や細菌もいれば巨人もいる。悪魔や天使、妖精や妖怪もいるよ。
みんな、個性的なんですね。
でも、忘れちゃいけないのは、その向こうには、必ず心を持った人がいるということだ。
なるほど。
中には、人間が嫌い。というロールプレイングをしている人もいるけどね。
ロールプレイングってゲーム?
もともと、ロールプレイングとは、ロール(役割)をプレイ(演じる)ということだ。そういう楽しみ方をしている人は多いし、ファーリーなどのアバターの人はロールプレイをしている割合が比較的多いね。
僕らも自然とロールプレイをしているのかもしれませんね。
うん。セカンドライフの中には『自分』というキャラクターは存在しない。それを演じているのは『自分』である俺たちなんだ。
ところで、ラスクウッドって有名なんですか?
海外では超メジャーなファーリーの集う場所だね。古いプレイヤーなんかは、ここで海外のファーリー愛好家と知り合った人は多いはずだ。


ファーリーのアバターになるセットも売ってるんですね。
フリーのお試しようアバターセットもあるから、ファーリーに興味がある人も、そうでない人も試してみるといい。はじめは興味なかったけど、知らない間にはまってしまったという人もいるしね。
動物が好きな人が多いのかなぁ。
そうとも限らない。たとえば、露出の高い服などセカンドライフには多く販売されているよね? 普通のアバターだとちょっと恥ずかしい、でもファーリーなら、なんとなく恥ずかしくないと思う人もいるみたい。
もともと裸がユニフォームの人たちだからなぁ。
英語に抵抗が無いなら、ラスクウッドはおススメだ。日本語しか話す気になれないなら、OinariというSIMがある。ここはFurry Japanというのを主催しているFakefurさんたちが作り上げたSIMなので、自然とファーリーが集まってくるようだよ。
しかし、不思議なもんですね。表面はつるっとしたプリムなのに、なんとなくフワフワしているような気がする。
実際にフワフワの人もいるけど、ある程度デフォルメ化された世界においては、必ずしもリアルすぎる必要は無いんだ。毛を一本一本作っていった方がかえって奇妙に思えてしまう。
なるほど。
セカンドライフの世界は、無から物を作れる。だから、現実における、毛皮反対運動などで裸でデモをする必要は無いんだ。ある意味、やさしい世界といえるね。
それはわかりましたから、とりあえず服を着てください。
フリーダムッ!

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