「でな、ここからが傑作なんだ。その男は、危機一髪の状況でなんて言ったと思う?」
「ラブさん」
「ん?」
「少し黙っててください、集中できないんで」ロキは冷たく言い放った。
「なんだよなんだよ! 俺はせっかくお前がモノを作るのを応援しようと思って、特選名作小話全集の中からさらにえりすぐったマイフェイバリットをお届けしてるのに!」ラブは子供のように地団駄を踏みながら口を尖らせる。
「だから、それが迷惑なんですよ! わからないことがあったら質問しますから、邪魔しないでください」ロキは、オブジェクトを小刻みに動かしながら目を合わせずに言う。
「へーんだ! もう知らないからな。お前なんかタンスにいつの間にか貼ってあるシールがなかなか取れなくて、一生懸命取ったけどなんかまだベトベトしててそこだけ汚れとかが異常につきやすくなって、なんか結局シール貼ったままの方が綺麗なんじゃね? みたいな感じになってしまえ!」わけのわからない呪詛の言葉を吐いて、ラブは足音高く離れていったが、それすらもロキは聞いていなかった。
しばらく、と言ってもかなり長い時間になっただろう。ロキが生み出したプリムを捏ねる集中力を欠いてきたとき、一人の若い男性がロキに近づいた。
「あの、すみません」
「は、はい?」ロキが返事と共に振り返る。
「ちょっと、質問があるんですけど」男は、申し訳なさそうに上目遣いでロキを見る。
「質問……わかるかなぁ。いや、僕もまだこの世界に馴染んでなくて。あ、わかりそうな人がいるんですけど、あれ? ラブさーん」ロキが周りを見回すと、ラブがお布団を綺麗に敷いて熟睡してた。その目元にはうっすらと涙の跡が……。
「寝てるみたいですね。なんですかね?」
「ええと、全部つなげたプリムの中から一つだけ動かしたいんですけど……」男が複数のプリムから作られたオブジェクトを地面に出す。
「あぁ、それはですね、多分ですけど……」ロキは、自分の知っている知識の中からなんとか相手にわかるように伝えようと懸命に話した。時間はかかったが、相手と一緒に試行錯誤していくうちに、なんとか問題は解決したらしい。
「ありがとうございました」感謝の笑顔を浮かべ、頭を下げる青年。
「なんか、僕も良くわかってないんで、うまく伝えられなくてすみませんでした。……それは?」ロキは、青年の作ったオブジェクトを指して聞いた。
「あぁ、これは、マクガフィンです」青年が照れながら答える。
「へぇ、上手いもんですね」マクガフィンがなんなのか、ロキはまったくわからなかったが、正直そろそろ自分の作業に戻りたかったし、聞いて話が盛り上がっても面倒なので、つい適当に返してしまった。
「えっ!? マクガフィンをご存知なんですか?」青年は驚いて言う。
やばい、そうきたか。ロキは心の中で舌を打ったが、ここは適当に話をあわせて置けばいいだろう、マクガフィンの正体はあとでラブさんにでも聞こうと思い目を泳がせながら答えた。
「いや、あんまり詳しくないですよ。普通です。普通」
「普通、知らないですよ! マクガフィン見たことあるんですよね?」青年は完璧にロキに対して羨望の眼差しで見てる。
「いや、あの……。チラッとね。ほんのチラッと」ここまできたら、もう知りませんとは言えないムードになってきて、ロキは早くこの会話を終わらせたかった。
「すげー! どんなでした? 色とか」
色なんて知らねーよ。と、心の中で思いながら、ロキは話を上の空であわせた。
「あの、暗かったから……。あんまりよくは見てないって言うか」
「え? 暗いところで? ……おかしいなぁ」青年は首をかしげ、ロキを多少疑いを持った目で見た。
「違くて、暗い……ムードだったの。僕が、個人的に。たまたまね」ロキは、動揺を悟られぬように目をそらす。
「そうですよね。まさか暗いところにマクガフィンがねぇ。あはは。……ところで、マクガフィンて何なんですか?」
知らないよ! そっちが勝手に作ってたんじゃないか。何でいつの間にか、僕のほうがマクガフィンの権威みたいになっちゃってるんだ。ロキは、泣きそうになりながら。
「……なんだと思います?」と、質問を質問で返してみた。我ながらナイス返答だ。とほくそ笑みながら。
「知りませんよっ! 知らないから聞いているんじゃないですか」青年は、ちょっとイラッとした感じで返事をしたので、ロキは戸惑った。
全然ナイス返答じゃなかった。なんで、こんな窮地に立たされているんだろう。ラブさんがいたら、聞けるのに。いまさら知りませんとはいえないし、すごい面倒なことになってるし、相手はキレかかってるし。もう、本当に帰りたい。とロキは心底思っていた。
「マクガフィンは……みんなの心の中に……あると……」ロキが明らかに狼狽しながら口を開くと。
「おぉう? できたー?」と、ラブが呑気に起き上がりながら聞いてきた。
「あ、ラブさん! ちょうど良かった」ロキはまさに地獄に仏と言った感じでラブに縋る。
「あ、お連れの方がいたんですか。失礼しました。じゃ、僕はこれで」そう言うと青年はマクガフィンをしまうとそそくさと立ち去ってしまった。
「ほぉ、知り合いが出来たのか。そう言うのがサンドボックスのいいところだよね。で、何か用か?」ラブは、背中をかきながら寝起きの顔をのぞかせた。
「……もういいです」ロキは、このやり場のない感情をどこにぶつけていいのかわからないまま、結局、自分の心の葛藤はなんだったのかと悔いた。
「サンドボックスにはさぁ、いろいろな人が集まるんだよ。主に物を作る人が多いんだけど、そういう人同士で作ったものを見せ合ったり、質問をしたりとか、コミュニケーションも生まれる。そういうのが楽しかったり、煩わしかったり……」ラブが話すのを途中でさえぎってロキは聞いてみた。
「マクガフィンてなんですか?」
「何それ? 知らね」
「やっぱ、もういいです……」この人は、心底役に立たないなぁ、とロキは少しでも期待をした自分を恥じた。
「お、できてるじゃん。すげーな」ラブは、ロキの作ったオブジェクトを見てうなづいた。
「まぁ、ちょっと不細工ですけど、なんとかここまでできました」謙遜しながらも、ロキは少しだけ誇らしく答えた。
「これは……。可燃? 不燃?」
「なんで、ゴミ前提なんだ。違いますよ。見てわかりませんか?」もう、色々消耗しきってイラッときてるロキは、ブスッと答えた。
「わからない。何これ?」
首をかしげるラブに、ロキは視線も合わせずに答えた。
「マクガフィンです」
hiya.Loveです。
ロキです。
今日は、サンドボックスという場所の説明です。
サンドボックス、日本語にすると砂場ですね。
そうそう、日本人では砂場って言っている人もいるね。サンドボックスとは、元々プログラムとかを開発するときに、暴走などをしてもいいように隔離された空間のことを言うんだけど、セカンドライフでは、主にオブジェクトやスクリプトなどを製作するときに使用される場所とされている。
へー。セカンドライフのサンドボックスは、別に隔離されてませんよね?
うん。たいがい、誰かの土地が好意によってサンドボックスにされている場合が多いね。セカンドライフでは、オブジェクトやスクリプトなどは、その空間にREZ。つまり、出現させないと作れないので、場所が必要なんだ。
REZって聞いたことない言葉ですけど。
REZっていうのは、読み込んだりするっていう意味があるらしいよ。かなり昔のSF映画のトロンっていうのに出てきた単語がモチーフになってるらしい。転じて、オブジェクトを読み込んだり、出現させたりするときにも使われる。ちょっと読み込みが遅い場所だと「REZが遅い」とか言われるね。
たまにありますね。REZが遅くて服がぼやけていたりする人。
サンドボックスでは、あまり迷惑をかけない限り実験とかをしてもいいという場合が多いね。そして、なるべく処理の軽い場所が好まれるので、空中にあるサンドボックスなどもあるよ。
Sky Sand Boxってやつですね。
そうそう。サンドボックスの探し方は、ツールバーの編集の検索(Edit>Seach)で場所のタブを開いて、sandboxと入れればいくらでも出るよ。
一杯ありすぎて迷いますね。
普通の場所検索だと、トラフィックの高い場所、つまり人気のある場所ほどいい場所とされているけど、サンドボックスに関しては、人が少なくて人気のない場所ほど軽いから好まれるね。
でも、なんでサンドボックスなんですか? その辺で作っちゃえばいいのに。
まぁ、その辺で作ってもいいんだけど、場所は、そのオーナーによって、オブジェクトを出すのを禁止されていたり、リターン設定がされていたりする場合があるんだ。
リターン設定って何ですか?
出されたオブジェクトが一定時間を越えるとインベントリに自動的に戻されるシステム。これがあるおかげで、景観などが保たれていたりするんだね。
サンドボックスにはリターン設定はないんですか?
あるよ。でも、サンドボックスとして謳っている場所は、リターンされるまでの時間が長いからね、製作は時間がかかるから設定が長い場所の方がいいんだ。
なるほど。スクリプトなどが動かせるかどうかも問題ですね。
でも、サンドボックスは、好意で開いてもらってる場合が多いからね、終わったら必ず片付けるのが礼儀だよ。
サンドボックスのマナーですね。
あと、コミュニケーションをとるのも大事かもしれないけど、人が製作しているのを邪魔しちゃダメ。
邪魔するのはあんたでしょ。
そういうのを守っていれば、楽しいコミュニケーションもいいし、色々と試行錯誤してみるのもいいかも。
あ、本編でちょっと触れた、リンクされたプリムの中から一部のプリムだけを選んで動かすのはどうやるんですか?
それはね。オブジェクトエディットの窓の編と書いてあるボタンを押して、リンク部位を編集というところにチェックを押すといいよ。ちなみに、Shiftを押しながら、動かしたいプリムを選ぶと複数を同時に動かすことも可能だ。
わかりました。
最後に、MagSLの土地で、オブジェクトを出せる場所はリターン設定をあえてしていない場所が多いんだけど、これは、作ったものは自分で片付ける。ということを覚えて欲しいからだそうな。
そうだったんですか。
モノを買ったりしたあとは、箱を開けるために一時的にそこにオブジェクトを出したりすることが必要になるからね。でも必ず出したオブジェクトは片付けること。
大事なマナーですね。
出したらしまう。飲んだら乗るな。死んだらどうなる。
最後のは、標語でもなんでもない、大霊界(丹波哲郎監督)のキャッチコピーだよね。古いよ!
マグスル second life セカンドライフの遊び方マガジン
magsl 2007/01/05









