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magslmagsl 2006/12/18

セカンドライフで踊る人々

『踊る神のみを信じる』と言ったのはフリードリヒ=ニーチェであるが、セカンドライフの世界の中では、踊っている人が多く見られる。彼らは、皆、一様に目的があって踊っているのだ。今回は、その踊る民に注目してみたい。

踊っているキャラクター(セカンドライフの世界ではアバターと呼ばれる)の足元には、なにやら円盤のようなものがある。これはダンスパッドと呼ばれるもので、セカンドライフ独特の要素の一つである。ダンスパッドというのは、その上で一定時間以上、踊り続ければ、それに対してオーナーが通貨であるリンデンドルを支払うと言うシステムである。ようするに、その土地のオーナーは、お金を払って人をその場所に居させたいのだ。

これは、商売において別に珍しいわけではなく昔からある手法である。いわゆるサクラだ。店舗の新規開店や、同業種が近くに居る場合など、もしくは広告の意味も込めてイベントをするのもこれに含まれるだろう。実は、これほど伝統的とも言えるサクラというものがセカンドライフ内で多く取り入れられているのには、他にも理由がある。

トラフィックという言葉をご存知だろうか。英語で交通を意味するこの言葉は、ネットワーク技術分野では、情報量という意味を持って使用される。セカンドライフの中でもトラフィックという概念が使われ、それは、一つの場所に幾人かの人間がどれだけの時間いたか。そののべ数量をトラフィックと呼んでいる。その土地のオーナーは、自分の土地のトラフィックの量を上げたいのだ。  なぜ、トラフィックの量を上げたいのか?

これは、セカンドライフがネットワークメディアであることによる。店舗などで買い物をする、観光スポットで観光をする、テーマパークで遊ぶ、その時、ユーザーたちは、その場所の情報を手に入れなければいけない。その時に使うのが検索システムである。これにより、ユーザーは自分の嗜好にあった場所を探し出し、その場所にテレポートする。

とはいえ、同業種の場所は大量にある。その中で、差別化を計る一つの指針となるのがトラフィックの量である。トラフィックの量が多い場所、それは多くの人が集まっている場所。つまり、人気の場所となる。私たちは、知らず知らずのうちに、これと同じことをインターネットを通じて行なっている。インターネットで何かを調べる時に、検索をかけ、物を調べる。その時に、自然と、検索の上位に来た情報を正しい情報であると認識することはないだろうか。

ケースにより、それは正しい場合もあれば、異なる場合もある。しかし、心理的に信頼したくなる情報は、検索の最後の方にある情報よりも、最初の方にある情報になるのではないか。これは、インターネットの検索システムの持つトラフィックの多さを無意識的に信用していることになる。

セカンドライフの世界の中でも同様に、トラフィックの量が多ければ検索の上位にひっかかる。そして、その場所に人々は集まりたがる。セカンドライフの中では、ダンスパッドの他にも、キャンピングチェア、一定時間店内にいることによって商品の値段が下がるモッドベンド、時間ごとに変わるイニシャルの人にプレゼントをするラッキーチェアなど、さまざまな手法でトラフィックを稼ぐ方法がとられている。

サクラという、一見すると前時代的にも思われるその手法は、実は、現代のネットワーク社会において、新しい価値と理由を見出された効果となった。『踊る人々を信じる』それは、ネットワーク社会が作り出した、一つの結果なのかも知れない。

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